- 津波のおそれがある地域では、強い揺れや弱くても長い揺れを感じたら、津波警報を待たずに避難します。
- 一度避難したら、津波警報・注意報が解除されるまで海岸へ戻らないでください。
- 津波の心配がない地域でも、揺れている間はまず落下物や倒れてくる家具から頭と体を守り、揺れが収まってから状況を確認します。
- 家庭では飲料水や食料などを最低3日間、できれば1週間分備蓄し、飲料水は1人1日3リットルを目安にします。
「南海トラフ巨大地震はいつ起きるの?」「自分の地域にはどんな被害が出る?」「結局、何を備えておけばいい?」と不安に感じている人も多いでしょう。
南海トラフ沿いでは、過去にも大規模な地震が繰り返し発生してきました。
ただし、最初に押さえておきたいのは、国が公表している「南海トラフ巨大地震」の被害想定は、次に起きる地震の規模や場所、発生時刻を予言したものではないということです。
2025年3月に内閣府が公表した新しい被害想定は、科学的に想定される最大クラスの地震・津波をもとに、防災対策を考えるために作られたシナリオです。
数字の大きさだけに不安を感じるのではなく、自宅では何が起こり得るのか、地震が起きたらどこへ逃げるのか、ライフラインが止まったら何日暮らせるのかまで自分の生活に置き換えて考えることが大切です。
南海トラフ巨大地震とは?
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけての南海トラフ沿いで発生する大規模な地震です。

この地域では、過去にも大規模な地震が繰り返し発生してきました。
南海トラフ沿いでは、フィリピン海プレートが陸側のプレートの下へ沈み込んでいます。プレート境界にたまったひずみが解放されることで、大きな地震が発生します。
「南海トラフ巨大地震」という言葉は、特に防災対策を考えるために設定された最大クラスの地震・津波を指して使われることがあります。
そのため、「次に必ず想定どおりの場所が全部一度に動き、最大規模の地震になる」という意味ではありません。
南海トラフ巨大地震が起きたらどう行動する?
津波のおそれがある地域では強い揺れ・長い揺れを感じたらすぐ避難
海岸付近で強い揺れを感じた場合や、弱くても長くゆっくりした揺れを感じた場合は、津波警報を待たずに避難を始めます。
気象庁も、震源が陸地に近い場合は津波警報・注意報が津波の到達に間に合わないことがあるため、こうした揺れを感じたらすぐ避難するよう呼びかけています。
避難先は、自宅近くの自治体の津波ハザードマップで事前に確認しておきます。
基本は、より高い場所、より海から離れた安全な場所です。
近くに高台がない地域では、自治体が指定する津波避難ビルや津波避難タワーなどを利用する場合があります。

一度避難したら、津波警報・注意報が解除されるまでは海岸へ戻らないでください。津波は一度だけではなく、繰り返し襲ってくることがあります。
津波の心配がない地域でも強い揺れへの備えが必要
南海トラフ巨大地震は津波のイメージが強いですが、沿岸部以外では強い揺れによる建物倒壊、家具転倒、火災も大きな問題になります。
地震が発生した瞬間は、避難を始めることよりも、まず落下物や倒れてくる家具から頭と体を守ります。その後揺れが収まってから、建物の被害、火災、津波、周囲の状況を確認して次の行動を決めます。
特に古い住宅では、自宅の耐震性を確認することが重要です。
自治体によっては耐震診断や耐震改修への補助制度があります。自宅の建築時期や耐震性能が分からない場合は、自治体の窓口などで確認してください。
南海トラフ巨大地震の想定震度
2025年に見直された最大クラスの想定では、主に太平洋側の広い範囲で強い揺れが予測されています。最大ケースでは、149市町村で震度7、600市町村で震度6弱以上が想定されています。
津波についても地域差が大きく、最大クラスのケースでは高知県の一部で最大約34mの津波高が想定されています。
さらに、一部の沿岸地域では1m以上の津波が最短約2分で到達する想定があります。
だからこそ、津波のおそれがある地域では、「津波警報をスマートフォンで確認してから避難しよう」では間に合わない可能性があります。
南海トラフ地震の発生確率は「30年以内80%」ではなくなった?
2026年現在、「30年以内80%程度」という数字だけを最新の発生確率として示すのは適切ではありません。
地震調査研究推進本部は2025年9月、南海トラフ地震の長期評価を一部改訂しました。
現在は、異なる2つの計算方法によって、今後30年以内の発生確率を次のように評価しています。
- 60%~90%程度以上
- 20%~50%
2つは異なる計算方法による評価で、地震調査研究推進本部は現時点で両者に優劣をつけられないとして、両方の確率値を示しています。
そして、どちらの評価も、地震本部の確率ランクでは最も高い「IIIランク(高い)」に分類されています。防災対策として具体的な数字を伝える必要がある場合、地震本部は、より高い方の「60%~90%程度以上」を念頭に行動する考え方を示しています。ただし、これは「○年以内の○月に起きる」と予測する数字ではありません。発生時期、場所、規模を高い確度で予測することはできません。この発生確率は、南海トラフで発生するM8~9クラスの地震についての長期評価です。
内閣府が被害想定で用いている「最大クラスの南海トラフ巨大地震」が、30年以内にこの確率で発生するという意味ではありません。
2025年3月、新しい南海トラフ巨大地震の被害想定では何が変わった?
内閣府は2025年3月31日、最新の科学的知見、地形データ、耐震化の進み具合などを反映した南海トラフ巨大地震の被害想定を公表しました。
最大クラスの地震・津波によって、広い範囲で強い揺れや津波が発生した場合、次のような被害が想定されています。
| 項目 | 想定される最大規模 |
|---|---|
| 津波・揺れ等による死者数 | 約17.7万人~約29.8万人 |
| 災害関連死(試算) | 約2.6万人~約5.2万人 |
| 全壊・焼失 | 約235万棟 |
| 上水道の断水 | 最大約3,690万人 |
| 下水道の利用困難 | 最大約3,570万人 |
| 停電 | 最大約2,950万軒 |
| 固定電話の通話不能 | 最大約1,310万回線 |
| 避難者 | 最大約1,230万人 |
ただし、これらは項目ごとの最大値です。死者数は津波からの早期避難の割合などによって大きく変わります。また、各項目の最大値は必ずしも同じ条件で同時に発生するものではありません。季節、時間帯、風速、地震動や津波のケースなどによって結果は変わるため、「この数字がすべて同時に起きる」と読むものではありません。
また、この数字は将来の実際の被害を確定したものでもありません。住宅の耐震化、津波避難の早期化、家具固定、火災対策などによって被害を減らすことができます。
南海トラフ地震臨時情報が出たら、地震が来るの?
南海トラフ地震臨時情報は、地震の日時を予知する情報ではありません。
南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に、大規模地震の発生可能性が平常時より相対的に高くなったかを調査し、その結果を知らせる情報です。

主なキーワードには、次のものがあります。
- 調査中
- 巨大地震警戒
- 巨大地震注意
- 調査終了
「巨大地震警戒」が発表された場合でも、日本中の人が一律に避難所へ1週間避難するわけではありません。
地震発生後では津波からの避難が間に合わない可能性がある一部の地域では、自治体からの呼びかけに基づき1週間の事前避難を行う場合があります。巨大地震警戒の最初の1週間が経過した後は、事前避難は終了しますが、さらに1週間は「巨大地震注意対応」に切り替わり、すぐに避難できる態勢や非常持出品の携帯など、地震への特別な備えを続けます。
それ以外の地域でも、家具固定、避難場所・経路、備蓄、家族との連絡方法などを改めて確認し、地震が起きたらすぐ行動できる状態にします。
臨時情報が出ていなければ安心という意味ではない
南海トラフ地震臨時情報には大きな限界があります。
情報が発表されないまま、大規模地震が突然発生する可能性があります。
逆に、巨大地震注意や巨大地震警戒が発表されても、その後必ず大規模地震が起きるわけではありません。つまり、「臨時情報が出てから備えればいい」という考え方では間に合いません。
臨時情報は、すでに行っている日頃の備えをさらに強化するための情報として考えましょう。
南海トラフ巨大地震ではライフラインが広範囲で止まる
南海トラフ巨大地震の特徴の一つは、非常に広い地域が同時に被災する可能性があることです。
2025年の想定では、最大約2,950万軒の停電、約3,690万人の断水、約3,570万人の下水道利用困難などが推計されています。
道路、鉄道、港湾なども被害を受ければ、被災地への人員や物資の輸送にも影響します。
つまり、「避難所へ行けばすぐ水や食料がもらえる」「翌日には電気が戻る」とは限りません。
広い地域で被害が重なる災害ほど、外部からの支援が届くまでに時間がかかる可能性を考えておく必要があります。

家庭の備蓄は最低3日、できれば1週間を目安にする
内閣府は、各家庭で最低3日間、できれば1週間生活できる飲料水や食料などを備蓄するよう案内しています。
飲料水は、1人1日3リットルが一つの目安です。
ただし、南海トラフ巨大地震では広い地域が同時に被災する可能性があるため、可能なら1週間程度を意識して備えておくとよいでしょう。
食料と水だけでなく、次のようなものも確認しておきます。
- 携帯トイレ
- 常用薬
- モバイルバッテリー・充電手段
- 懐中電灯・ランタン
- カセットコンロと燃料
- 衛生用品
- 乳幼児、高齢者、ペットなど家族に必要なもの
- 現金
- 携帯ラジオ
すべてを非常食だけで揃える必要はありません。普段食べている食品を少し多めに購入して使った分を補充するローリングストックなら、日常生活の延長で備蓄を続けやすくなります。
家具固定は「けが防止」だけでなく避難経路を守るため
大きな地震では、家具や家電が倒れたり移動したりします。
寝室で家具が倒れれば人が下敷きになるだけでなく、廊下や出入口をふさいで避難できなくなる可能性があります。
背の高い家具は固定し、寝る場所や子どもが普段いる場所には、できるだけ大型家具を置かないようにします。
テレビや電子レンジなども、転倒・移動しないよう固定方法を確認しておきましょう。
感震ブレーカーで地震火災に備える
大規模地震では、電気に起因する火災も大きな問題になります。
感震ブレーカーは、一定以上の揺れを感知して自動的に電気を遮断する装置です。
避難時に自分でブレーカーを切れない場合や、不在時に地震が起きた場合にも、電気火災を抑える効果が期待できます。
ただし、設置するときは、停電時の照明や在宅医療機器への影響も考える必要があります。
夜間の避難に備えて、電池式の足元灯や懐中電灯を用意し、医療機器を使用している家庭では、予備バッテリーや停電時の対応を医師や機器メーカー等と事前に確認してください。
今から確認したい7つの備え
南海トラフ巨大地震への備えは、特別なことばかりではありません。
- 自宅のハザードマップを確認する
- 津波のおそれがある場合は避難先と避難経路を実際に歩く
- 自宅の耐震性を確認する
- 家具・家電を固定する
- 感震ブレーカーや地震火災対策を確認する
- 最低3日、できれば1週間分の備蓄を用意する
- 家族の連絡方法と集合方法を決める
特に津波のおそれがある地域では、避難先の名前を知っているだけでなく、自宅・学校・勤務先から実際に何分で移動できるのかを確かめておくことが重要です。

被害想定の数字ではなく「わが家ならどうするか」まで決めておく
約29.8万人、約235万棟、約2,950万軒――南海トラフ巨大地震の被害想定には非常に大きな数字が並びます。
しかし、数字を見て怖がるだけでは備えにはつながりません。
自宅は津波浸水区域なのか。住宅は強い揺れに耐えられるのか。地震が夜に起きても安全に外へ出られるのか。停電・断水しても家族が1週間程度生活できるのか。
大きな被害想定を、家庭でできる具体的な行動へ変えることが大切です。
そして沿岸部では、強い揺れや弱くても長い揺れを感じたら、情報を待たず津波から避難する。この行動だけは、平時のうちに家族全員で共有しておきましょう。
よくある質問
- Q南海トラフ地震は今後30年以内にどのくらいの確率で発生すると評価されていますか?
- A
地震調査研究推進本部は、南海トラフで発生するM8~9クラスの地震について、今後30年以内の発生確率を「60%~90%程度以上」と「20%~50%」の2つの計算結果で示しており、どちらもⅢランク(高い)です。なお、これは内閣府の被害想定で用いられている「最大クラスの南海トラフ巨大地震」が、この確率で発生するという意味ではありません。また、発生日時や場所を予測する数字でもありません。
- Q南海トラフ地震で強い揺れを感じたら、津波警報を待ってから避難すればいいですか?
- A
海岸付近では待たないでください。強い揺れや、弱くても長くゆっくりした揺れを感じた場合は、津波警報・注意報の発表を待たず、海辺から離れてより高い安全な場所へ避難します。一部地域では1m以上の津波が最短約2分で到達する想定があります。
- Q南海トラフ地震に備えて、食料や水は何日分必要ですか?
- A
内閣府は、各家庭で最低3日間、できれば1週間生活できる飲料水や食料などの備蓄を勧めています。飲料水は1人1日3リットルが目安です。南海トラフ巨大地震では広い地域が同時に被災し、物流や支援が遅れる可能性があるため、可能なら1週間程度を意識して準備しておきましょう。
参考資料・出典
- 内閣府「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 被害想定・震度分布・津波高等」
- 内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定(令和7年 最大クラスの地震)」
- 内閣府「南海トラフ地震防災対策推進基本計画の変更の概要」
- 地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)の手引き」
- 地震調査研究推進本部「南海トラフで発生する地震」
- 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報について」
- 気象庁「南海トラフ地震臨時情報が発表されたときの防災対応」
- 気象庁「津波から身を守るために」
- 内閣府「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」
- 総務省消防庁「感震ブレーカー」
情報確認日:2026年9月17日

