通電火災を防ぐ 〜「感震ブレーカー」の種類と設置の重要性 〜

まず覚えておきたいこと
  • 避難時にブレーカーを落とせない場合に備え、分電盤やコンセントへ感震ブレーカーを設置する
  • 作動は地域の震度だけでは決まらず、建物の構造や設置場所、地盤、揺れ方などによって異なる。
  • 分電盤・簡易・コンセントの各タイプから、自宅の分電盤の状況や居住形態に合わせて選定する。
  • 設置とあわせて照明や医療機器のバックアップ電源を備え、蓄電池がある家庭は地震時の設備動作を事前に確認する。
  • 取扱説明書に従って定期的に作動状態を確認し、必要に応じて部品を交換する。

感震ブレーカーはなぜ必要? 地震後に注意したい「通電火災」のメカニズム

過去の大規模な自然災害、特に阪神・淡路大震災や東日本大震災などの甚大な被害をもたらした震災を振り返ると、激しい揺れによる建物自体の倒壊や家具の転倒だけでなく、その後に大きな脅威ともなるのが「火災」です。
地震では、電気ストーブの転倒や電源コードの損傷などによる「電気火災」が多く発生します。さらに、地震によって停電した後、損傷した電気機器や配線に電気が復旧した際に出火する「通電火災」にも注意が必要です。

電気火災には揺れの直後に発生するもの、不在中に発生するもの、停電復旧時に発生するものなど複数パターンがあり、そのうち復電後に発生するケースを一般に「復電火災」「通電火災」と整理しています。

内閣府・消防庁・経済産業省の検討会資料では、阪神・淡路大震災で出火原因が不明なケースを除いた139件のうち85件(約61%)が電気に起因する火災だったとされています。

地震の激しい揺れによって電気ストーブなどの電熱器具に可燃物が接触したり、家具の転倒などで電源コードや屋内配線が損傷したりした状態で、住民が避難した後や電力復旧時に電気が自動で再開すると、一気に火災が発生して家屋の全焼や甚大な人的被害につながる危険性があります。

通電火災と感震ブレーカー

こうした避難後を狙う不可視の火災リスクを防ぐためには、避難時にブレーカーを落とすなどの対応が必要です。しかし状況次第ではその対応が不可能な場合もあります。そのような際にもハード面での有効な対策があり、それが住宅の分電盤やコンセントに「感震ブレーカー」を設置することです。

参考記事地震避難時、ブレーカーの落とし方と通電火災の防ぎ方

感震ブレーカーとは何か?仕組みと期待される地震火災の抑制効果

感震ブレーカー等は、地震による一定以上の揺れを感知すると、分電盤のブレーカーを作動させたり、対象となるコンセントへの電力供給を遮断したりする装置です。

地震の発生時には、住民自身がパニック状態に陥っていたり、家屋から急いで避難しなければならなかったりするため、手動でブレーカーを落とす余裕がないケースが多々あります。また、自宅を留守にしている最中に地震が発生した場合、人間の手でブレーカーを落とすことは物理的に不可能となります。

感震ブレーカー等は、一定以上の揺れを感知すると、製品の方式に応じて電気を自動的に遮断します。国の性能評価ガイドラインでは、作動確認試験の基準として震度5強相当の揺れが用いられています。ただし、実際の作動は建物の構造や設置場所、地盤、揺れ方などによって異なり、地域で発表された震度だけで作動・不作動が決まるわけではありません。

令和8年版防災白書では、都心南部直下地震・冬夕方・風速8m/sという特定条件の試算で、感震ブレーカー等の設置率が現状約20%から100%になった場合、焼失棟数が約26.8万棟から約7.4万棟へと想定被害が約72%減少するとされています。

感震ブレーカーの主な3つの種類と自宅環境に合わせた選び方

感震ブレーカーには、住宅の配線環境や予算、構造に合わせていくつかの種類が存在し、それぞれに設置方法や動作の仕組みが異なります。

1:「分電盤タイプ」
住宅の分電盤に感震機能を備え、一定以上の強い揺れを感知すると、主幹ブレーカーを自動的に遮断して住宅全体への電気の供給を止めるタイプです。分電盤そのものに感震機能が組み込まれた**「内蔵型」と、既存の分電盤に感震センサーなどを追加する「後付け型」**があります。住宅全体の電気をまとめて遮断できるため、地震による電気火災を防ぐ有効な対策です。内蔵型は新築時や分電盤の交換時に導入しやすく、後付け型は既存住宅でも導入できる場合があります。いずれも設置には電気工事が必要となるため、対応する分電盤かどうかを含めて専門業者に確認します。

2:「簡易タイプ」
「簡易タイプ」には、分電盤に取り付けたおもりの落下やバネの作動でブレーカーを落とすもののほか、センサーで揺れを検知し、漏電ブレーカーを作動させて住宅全体の電気を遮断する製品もあります。地震の強い揺れによっておもりが落下したりバネが作動したりすると、その力でブレーカーのレバーを物理的に落とし、住宅への電気を遮断します。比較的安価で、電気工事をせずに設置できる製品が多いことが特徴です。一方、分電盤の形状によっては取り付けられない場合があるほか、正しく取り付けられていないと正常に作動しない可能性があるため、対応する製品かどうかを確認する必要があります。

3:「コンセントタイプ」
コンセントに感震機能を設け、一定以上の揺れを感知した際に、そのコンセントから電気機器への電気供給を自動的に遮断するタイプです。電気ストーブやヒーターなど、地震時に火災の原因となる可能性がある機器を個別に対策できるのが特徴です。住宅全体の電気を止める分電盤タイプとは異なり、基本的には設置したコンセントや接続した機器だけを遮断します。コンセントに差し込むだけで使える製品のほか、壁のコンセント自体を交換するため電気工事が必要な製品もあります。

自宅の分電盤の状況や居住形態に合わせて最適なタイプを選定することが重要です。

感震ブレーカー設置時の注意点|電気が止まることへの備えも必要

感震ブレーカーは、地震による電気火災を防ぐ有効な対策ですが、設置すればそれだけで安全になるわけではありません。
強い揺れを感知して電気を自動的に遮断するということは、地震発生後に住宅内が停電する可能性があるということでもあります。そのため、感震ブレーカーの設置とあわせて「電気が使えなくなった場合への備え」をしておくことが重要です。
特に夜間に地震が発生して電気が遮断されると、室内が突然暗くなり、避難経路が分からなくなったり、転倒した家具や割れたガラスにつまずいたりする危険があります。すぐに使える場所に懐中電灯やヘッドライトを置くほか、停電時に自動で点灯する足元灯などを備えておくと安心です。
また、在宅で人工呼吸器など生命維持に関わる医療機器を使用している場合は、感震ブレーカーによって電源が遮断された際にも機器を使用できるよう、バッテリーや非常用電源などのバックアップ電源をあらかじめ確保しておく必要があります。 使用している医療機器に必要な電源や停電時の対応について、平時から医療機関や機器の事業者などに確認しておきましょう。

住宅用蓄電池や、停電時に自立運転できる太陽光発電設備などがある家庭では、もう一つ注意が必要です。設備の構成や設定によっては、感震ブレーカーが作動して系統からの電気が遮断された後も、蓄電池などから住宅内へ電気が供給される場合があります。
その場合、感震ブレーカーが作動したから住宅内のすべての電気が止まっているとは限りません。 自宅の設備が地震時にどのように動作するのかを、施工業者やメーカーに事前に確認しておきましょう。

  • 医療機器を使っている場合はバッテリーを備える
  • 足元灯や懐中電灯を備える
  • 復電前にガス漏れがないか、電気製品や配線に異常がないか確認する
  • 定期的に作動性能を確認する
  • 取扱説明書に従い、必要に応じて部品を交換する
  • 蓄電池設置住宅では感震ブレーカー作動後も危険な通電が生じる場合がある

さらに、感震ブレーカーは設置したまま放置するのではなく、取扱説明書に従って定期的に作動状態を確認することも大切です。簡易タイプでは取り付け位置がずれていないか、分電盤タイプなどでは正常に作動する状態になっているかを確認しておきます。

感震ブレーカーは「付ければ終わり」の設備ではありません。電気火災を防ぐための遮断機能と、停電時に安全を確保するための備えをセットで考えることが重要です。

感震ブレーカーの自治体の補助金制度の活用。設置に向けた具体的なステップ

感震ブレーカーの重要性が広く認知されるにつれて、現在では一部の自治体では、感震ブレーカーの購入費や設置費に対する補助・助成制度が設けられています。

感震ブレーカーの導入と補助金活用のステップ

まずは自分が居住している市区町村の防災担当窓口や公式ホームページを確認し、対象となる製品の規格や申請手続きの流れを把握することが賢い導入の第一歩となります。

補助制度も活用しながら、自宅の設備や生活条件に合った感震ブレーカー等の導入を検討しましょう。家具の転倒防止や住宅の耐震化、停電への備えなどと組み合わせることで、地震時の電気火災リスクを減らす対策につながります。

よくある質問

Q
「通電火災」は、どのような理由で引き起こされますか?
A

揺れで電気機器に可燃物が接触したりコードがショートしていたりの状態で、電力復旧時に電気が自動で再開することで発生します。

Q
「感震ブレーカー」とはどのような役割を持つ装置ですか?
A

一定以上の揺れを感知すると、分電盤や対象となるコンセントへの電力供給を自動的に遮断し、地震による電気火災の発生を抑えるための装置です。

Q
感震ブレーカーにはどのような種類がありますか?
A

主に「分電盤タイプ」「簡易タイプ」「コンセントタイプ」があります。分電盤タイプには感震機能を内蔵したものや、既存の分電盤へ感震装置を追加するものがあります。

参考資料・出典

情報確認日:2026年9月17日

家の中の安全と備蓄

小林 裕(こばやし ゆたか)
保有資格:防災士(登録番号:第318434号)
認証機関:特定非営利活動法人 日本防災士機構

元日という特別な日。
幸せな日常や時間が一変し、理不尽に日常や大切な家族・知人を奪われた能登半島地震。
あまりのショックとその現実を前にして、「自分に何ができるのか」を深く自問自答した末に防災士の資格を取得し、防災・減災活動をスタートさせました。

また、本職であるマーケティングの分野で培った「情報を分かりやすく、正確に必要としている方へ届ける」という専門知見を活かし、一人でも多くの方に確かな防災情報を届けたいという想いから、当サイトの企画・運営に至っております。

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