- 安全に移動できるうちの立退き避難が基本で、道路が冠水するなど屋外移動が危険なら、無理に避難所へ向かわないでください。
- 屋内安全確保は、家屋倒壊等氾濫想定区域外で、想定浸水深より高い居室があり、水が引くまで生活を維持できる場合に選べます。
- 家屋倒壊等氾濫想定区域内や、安全な居室まで浸水する地域では、危険が高まる前に立退き避難してください。
- 災害が発生・切迫して立退き避難が難しいときは緊急安全確保を取り、必要な避難は原則として警戒レベル4「避難指示」までに終えてください。
台風や集中豪雨によって河川が氾濫したり、短時間の大雨で道路が冠水したりしたとき、「避難所へ行かなければ」と無理に外へ出ることが、かえって命を危険にさらす場合があります。
冠水した道路では、道路と側溝の境界やマンホールの位置が見えなくなるほか、水の流れによって歩くこと自体が困難になることがあります。消防庁も、冠水した道路を歩いて避難することは非常に危険であり、避難場所への移動は浸水が始まる前に行うことが基本だとしています。
自宅が屋内安全確保の条件を満たしている場合には、危険が切迫する前に上階へ移動し、安全を確保する方法があります。一方、避難が遅れ、すでに屋外を安全に移動できないほど災害が切迫している場合には、その時点でより安全な上階などへ移る「緊急安全確保」が必要になることがあります。

一般には「垂直避難」と呼ばれる移動ですが、2026年8月現在の内閣府の避難情報に関するガイドラインでは、災害の危険がある場所にいるものの自宅等で安全を確保できる場合に、上階へ移動したり高層階にとどまったりする避難行動を「屋内安全確保」としています。
ただし、どの家でも「2階へ上がれば安全」というわけではありません。垂直避難ができる条件と、できない場合の違いを理解しておくことが重要です。
大雨で屋外避難が危険なら無理に避難所へ向かわない
風水害の避難は、危険になる前に安全な場所へ移動する「立退き避難」が基本です。
指定緊急避難場所や安全な親戚・知人宅、ホテルなどへ安全に移動できる段階であれば、早めに立退き避難を行います。ところが、すでに道路が冠水している、激しい雨で前方が見えない、河川から水があふれて流れが生じているといった状況では、屋外移動そのものが新たな危険になります。

水で覆われた道路では、側溝や用水路、ふたの外れたマンホール、段差などを目で確認できません。また、水深がそれほど深く見えなくても流れが強ければ、足を取られて転倒したり流されたりするおそれがあります。
この段階で「避難所へ行くこと」を目的に無理に外へ出るのではなく、今いる場所と移動先のどちらが安全なのかを判断する必要があります。
垂直避難とは?上階へ移動する「屋内安全確保」
垂直避難とは、洪水などによる浸水の危険から逃れるため、建物の1階から2階以上など、より高い場所へ移動する避難方法です。内閣府の避難行動では、上階へ移動する、あるいは浸水しない高層階にとどまる行動を「屋内安全確保」と位置付けています。

例えば、自宅周辺に浸水が想定されているものの、建物が流失・倒壊する危険が低く、想定される浸水深より高い階に居室がある住宅であれば、上階で安全を確保できる場合があります。
マンションの場合も同様で、浸水しない階に住んでいるのであれば、危険な道路へ出て避難所まで移動するより、建物内にとどまるほうが安全な場合があります。
ただし、「高い場所に行けば必ず安全」という考え方ではありません。建物そのものが洪水で流されたり、想定浸水深が上階まで達したりする地域では、屋内安全確保は適切ではありません。
垂直避難・屋内安全確保ができる3つの条件
内閣府は、洪水時に自宅などで屋内安全確保を行うためには、少なくとも3つの条件を満たしている必要があるとしています。
- 家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない
一つ目は、自宅が「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っていないことです。家屋倒壊等氾濫想定区域とは、堤防の決壊による激しい氾濫流や河岸侵食によって、家屋が倒壊・流失するおそれがある区域です。
この区域では、たとえ2階に移動しても、建物そのものが流されたり倒壊したりする可能性があります。国土交通省も、この区域は屋内安全確保、いわゆる垂直避難の適否を判断するための重要な情報だとしています。したがって、自宅が家屋倒壊等氾濫想定区域にある場合は、可能な段階で区域外への立退き避難を行うことが重要です。ただし、家屋倒壊等氾濫想定区域の外であっても、浸水深や浸水継続時間など、ハザードマップに示された他の災害リスクもあわせて確認してください。 - 想定浸水深より高い場所に居室がある
次に自宅に浸水しない居室があることです。ハザードマップには、その地域で想定される浸水深が示されています。例えば2階の床まで水が到達すると想定されている場所では、単に「2階建てだから2階へ逃げればよい」とはいえません。
自宅の階数ではなく、想定される浸水深より高い位置に安全に過ごせる居室があるかを確認する必要があります。
浸水が居室まで達すると想定される平屋など、建物内で安全な高さを確保できない住宅では、洪水の危険が高まる前に安全な場所へ立退き避難することが重要です。 - 水が引くまで生活を維持できる
最後に、浸水が続く期間を建物内で過ごせることです。住宅が浸水すると、周辺の道路が水没して外へ出られなくなるだけでなく、電気、ガス、水道、トイレなどが使用できなくなる可能性があります。
そのため、飲料水や食料だけではなく、常用薬、携帯トイレ、照明、スマートフォンの電源などを確保しておく必要があります。

内閣府も、水や食料、薬の確保が難しくなることや、電気・ガス・水道・トイレが使えなくなることを、屋内安全確保を判断する際の重要な条件として挙げています。
垂直避難が危険になる場所では早めの立退き避難が必要
屋内安全確保が適さない場所もあります。
特に注意しなければならないのが、家屋倒壊等氾濫想定区域や、想定浸水深が建物の安全な居室まで達する地域です。国土交通省は、家屋の流失・倒壊をもたらすような氾濫流や河岸侵食が想定される区域では、建物自体の安全性を確保できないため、屋内安全確保は適切ではないとしています。
また、長時間の浸水が想定される地域では、上階が水につからなくても孤立が長期化する可能性があります。
つまり、「自宅には2階がある」「鉄筋コンクリートの建物だから大丈夫」という情報だけでは判断できません。
ハザードマップで浸水深、家屋倒壊等氾濫想定区域、浸水継続時間などを事前に確認することが、垂直避難を選べるかどうかの判断につながります。
すでに災害が切迫している場合は「緊急安全確保」に切り替える
屋内安全確保と似ていますが、区別して覚えておきたいのが「緊急安全確保」です。
屋内安全確保は、自宅などが一定の安全条件を満たしていることを平時から確認したうえで、自らの判断で建物内にとどまる避難行動です。
一方、警戒レベル5「緊急安全確保」は、すでに災害が発生または切迫し、安全な立退き避難ができない可能性が高い状況で、命を守るためにその時点で可能な行動を取る段階です。
例えば、自宅のより高い階へ移動する、洪水から少しでも離れた高い場所へ移る、現在いる建物より安全な近隣建物の上階へ移動できる状況であれば移動する、といった行動があります。
ただし、すでに道路が濁流になっている状況で「近くのマンションのほうが高いから」と無理に屋外へ出るのは危険です。
緊急安全確保は、必ず安全を確保できる行動ではありません。すでに危険が迫っているため、取れる選択肢が限られた中で、少しでも命が助かる可能性を高めるための行動です。
そのため、警戒レベル5まで待つのではなく、警戒レベル4「避難指示」までに必要な避難を終えることが原則です。
自宅で垂直避難するときは必要な物も上階へ移動する
自宅で屋内安全確保を選択する場合は、人だけが上階へ移ればよいわけではありません。浸水が始まれば1階へ戻れなくなる可能性があるため、安全に行動できる段階で必要な物を上階へ移しておきます。
- 飲料水とすぐ食べられる食料
- 常用薬や救急用品
- 携帯トイレ
- 懐中電灯やヘッドライト
- スマートフォンとモバイルバッテリー
- 携帯ラジオなどの情報収集手段
特に常用薬は、浸水によって数日間外出できなくなることを考えて確保します。

停電する可能性もあるため、スマートフォンだけに情報収集を依存せず、電池式ラジオなど複数の手段を用意しておくと安心です。
垂直避難を選べるかは大雨になる前にハザードマップで確認する
垂直避難は、道路が冠水してから初めて考えるものではありません。
大雨になる前の平時に、自宅のハザードマップを確認し、「自宅にとどまれるのか」「立退き避難が必要なのか」を判断しておくことが重要です。確認したいのは、自宅が洪水浸水想定区域に入っているかだけではありません。
想定浸水深、家屋倒壊等氾濫想定区域、浸水継続時間などを確認し、自宅の構造や階数と照らし合わせます。
家屋倒壊等氾濫想定区域や浸水継続時間が市区町村のハザードマップに掲載されていない場合もあります。その場合は、ハザードマップポータルサイトや自治体・河川管理者の公表資料も確認してください。
例えば、自宅が家屋倒壊等氾濫想定区域にあり、河川氾濫で建物そのものが危険になる可能性があるのであれば、「道路が冠水したら2階へ逃げる」という計画では不十分です。その家庭では、危険が高まる前の立退き避難を前提に避難計画を立てる必要があります。
反対に、家屋倒壊等氾濫想定区域ではなく、安全な上階があり、浸水継続中も生活を維持できる備えがあるのであれば、自宅での屋内安全確保を選択できる可能性があります。
まとめ|大雨時の垂直避難は「2階へ上がれば安全」ではない
大雨によってすでに道路が冠水し、屋外を移動すること自体が危険になった場合には、無理に避難所へ向かうことでかえって命を危険にさらす可能性があります。そのようなとき、自宅などの上階へ移動する「垂直避難」が命を守る行動になる場合があります。
ただし、垂直避難はすべての住宅で安全な方法ではありません。
「家屋倒壊等氾濫想定区域ではない」
「想定浸水深より高い安全な居室がある」
「浸水が続く間も生活を維持できる」
という条件を平時から確認しておくことが重要です。
また、すでに災害が発生・切迫して安全な立退き避難ができない場合は、その時点で少しでも安全な上階などへ移る「緊急安全確保」が必要になることがあります。そのため、立退き避難が必要な場合は、状況がそこまで悪化する前に避難を終えておくことが基本です。
「危険になったら2階へ逃げればいい」ではなく、「自宅では垂直避難が可能なのかを事前に確認し、立退き避難が必要な家では早く逃げる」。この違いを理解しておくことが、風水害から命を守るための重要な備えです。
よくある質問
- Q大雨で道路が冠水していたら、避難所へ行かず2階へ避難してもよいですか?
- A
屋外を移動すること自体が危険な場合、条件を満たす住宅では上階へ移動する「屋内安全確保」が選択肢になります。ただし、家屋倒壊等氾濫想定区域ではないこと、浸水しない居室があること、浸水中も生活を維持できることを確認しておく必要があります。
- Q2階建ての家なら洪水時は垂直避難で安全ですか?
- A
2階建てというだけでは安全とは判断できません。想定浸水深が2階まで達する地域や、家屋の流失・倒壊のおそれがある家屋倒壊等氾濫想定区域では、垂直避難が適切でない場合があります。平時にハザードマップで確認することが重要です。
- Q「屋内安全確保」と「緊急安全確保」は何が違いますか?
- A
屋内安全確保は、自宅などが一定の安全条件を満たしている場合に、上階へ移動したり高層階にとどまったりして安全を確保する避難行動です。緊急安全確保は、すでに災害が発生・切迫し安全な立退き避難ができない状況で、その時点で可能な命を守る行動を取ることです。
参考資料・出典
- 内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」
- 内閣府「避難情報に関するガイドライン(令和8年3月改定)」(屋内安全確保を行う上での条件を確認)
- 国土交通省「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4版)」
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト 掲載データについて」
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト 更新情報」
情報確認日:2026年8月29日

