- 指定緊急避難場所は災害種別ごとの指定を確認し、切迫時に命を守るため一時的に避難します。
- 指定避難所は、危険がなくなるまでの滞在や自宅へ戻れない人の一時的な避難生活のための施設です。
- 警戒レベル4「避難指示」では危険な場所にいる人は避難し、災害から安全を確保できる場所を選びます。
- 平時にハザードマップ等で災害リスク、対応する指定緊急避難場所、経路上の危険箇所を確認します。
災害から一時的に命を守るための「指定緊急避難場所」と、被災した後に一定期間滞在して生活を送る「指定避難所」という2つの施設について解説します。

東日本大震災では、「避難場所」と「避難所」が必ずしも明確に区別されておらず、そのことが被害拡大の一因となったことが指摘されています。こうした教訓から、現在は「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の役割が制度上明確に区分されています。
ここでは、公的ガイドラインに基づき、それぞれの施設の定義や法的な位置づけ、そして平時から行うべき確認方法について詳しく解説します。
指定緊急避難場所とは? 災害の危険から命を守る一時的な避難先
指定緊急避難場所は、市町村長が法令で定められた基準に適合する施設や場所を、洪水、土砂災害、高潮、地震、津波、大規模な火事、内水氾濫、火山現象などの災害種別ごとに指定します。そのため、同じ施設でも「洪水には対応しているが、別の災害には対応していない」という場合があります。避難する際は、その場所が自分が避難しようとしている災害の指定緊急避難場所になっているか確認することが重要です。
例えば、災害の種類や地域の状況によっては、津波避難ビルなどの建物や、高台にある公園・広場などが指定緊急避難場所として指定されることがあります。
また、土砂災害の危険性がある地域では、斜面から十分に離れた安全な公共施設などが該当します。重要なポイントは、この施設が「災害が迫っている最中や直後に、命を守るために一時的に駆け込む場所」であるという点であり、数日間にわたる長期の避難生活を送ることを主目的として建てられたわけではないという性質を正確に把握しておく必要があります。
指定避難所とは? 被災者が一定期間の避難生活を送るための生活拠点
一方で「指定避難所」とは、災害の危険から避難した人が、災害の危険がなくなるまで一定期間滞在したり、災害によって自宅へ戻れなくなった人が一時的に避難生活を送ったりするために、市町村長があらかじめ指定した施設です。学校の体育館や公民館などの公共施設が指定されることが多くあります。なお、防災マップや標識では災害種別に応じた表示がされることがありますが、指定緊急避難場所のように災害種別ごとの安全基準で指定される施設とは役割が異なります。

例えば、警戒レベル4「避難指示」が発令された場合、危険な場所にいる人は避難が必要です。その際、避難先は指定緊急避難場所に限らず、安全な親戚・知人宅やホテル・旅館なども選択肢になります。また、洪水などでは、ハザードマップを確認し、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない、浸水する深さより高い場所に居室があるなど、自宅で安全を確保できる条件を満たしている場合には、上階にとどまるなどの「屋内安全確保」が適切なこともあります。
なお、土砂災害など災害の種類によっては、危険な区域からの立退き避難が基本となります。重要なのは、「避難所へ行くこと」ではなく、その災害から安全を確保できる場所へ避難することです。
法律の改正による区分の明確化とそれぞれの選定基準
東日本大震災では、現在の制度ができる前のいわゆる「避難所」に避難した結果、津波などの被害に遭った事例が報告されています。当時は「避難場所」と「避難所」の役割が必ずしも明確に区別されておらず、同じ施設がすべての災害に対して安全とは限らないことが課題となりました。
こうした教訓を踏まえ、2013年の災害対策基本法改正によって、命を守るための「指定緊急避難場所」と、一定期間滞在するための「指定避難所」が制度上区別されました。

2013年の法改正により、市町村長は、災害種別ごとに命を守るための「指定緊急避難場所」と、被災者等が一定期間滞在する「指定避難所」を、それぞれの役割と指定基準に基づいて区別して指定することになりました。
なお、同じ施設が双方の基準を満たしている場合には、指定緊急避難場所と指定避難所を兼ねることができます。
この法的な制度改革により、それぞれの役割と指定基準が法律上明確に区分されました。住民側も「今、自分が向かっている場所は命を守るための場所なのか、生活を維持するための場所なのか」を冷静に判断し、災害の種類に応じた避難先を判断しやすい制度となりました。
平時のハザードマップ確認と避難経路の計画への組み込み方
これら2つの施設の機能や違いをどれほど頭で理解していたとしても、いざ大地震や激しい風水害が発生した瞬間に、自宅の周辺にある該当施設がどこにあるのかを把握していなければ、迅速な避難行動を起こすことはできません。平時のうちにハザードマップや自治体の防災マップを確認し、自宅や勤務先にどのような災害リスクがあるのか、その災害に対応した指定緊急避難場所がどこにあるのかを確認しておきましょう。あわせて、避難経路にアンダーパス、河川、崖など危険になり得る場所がないかも確認しておくことが大切です。
また、自治体が発行する防災マップや公式ホームページでは、それぞれの施設が「指定緊急避難場所」なのか「指定避難所」なのか、あるいは両方の機能を兼ね備えている施設なのかが明確に記載されています。家族全員で日頃から「災害の種類によってどこへ逃げるべきか」を共通認識として共有し、地域の防災訓練などに参加しながら実践的な避難経路をあらかじめ計画に組み込んでおきましょう。
家族で避難先や避難経路を共有し、実際に歩いて確認しておくことは、災害時に迷わず避難行動を取るための重要な備えになります。
よくある質問
- Q「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の基本的な役割の違いは何ですか?
- A
指定緊急避難場所は、切迫した災害の危険から命を守るために緊急的に避難する施設や場所です。指定避難所は、避難した人が災害の危険がなくなるまで必要な期間滞在したり、災害で自宅へ戻れなくなった人などが一時的に滞在したりするための施設です。
- Qなぜ「指定緊急避難場所」と「指定避難所」は明確に区別されるようになったのですか?
- A
東日本大震災では「避難場所」と「避難所」が必ずしも明確に区別されておらず、津波からの避難先として想定されていた従来の「避難所」に避難して被災した事例もありました。こうした教訓を踏まえ、2013年の災害対策基本法改正で両者の役割と指定基準が明確に区分されました。
- Q災害発生時に私たちが最初に向かうべき施設はどこですか?
- A
災害の危険がある場所にいる場合は、その災害から安全を確保できる場所へ避難します。指定緊急避難場所はその代表的な避難先ですが、安全な親戚・知人宅やホテルなども選択肢になります。また、災害の種類や自宅の条件によっては屋内安全確保が適切な場合もあります。平時から、災害の種類ごとに自分がどこへ避難するか確認しておくことが重要です。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「災害対策基本法」
- 内閣府「避難場所に関すること」
- 内閣府「指定緊急避難場所の指定に関する手引き(令和8年1月)」
- 内閣府「令和8年版 防災白書|指定緊急避難場所と指定避難所の確保」
- 内閣府「避難情報に関するガイドライン(令和8年3月改定)」
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
情報確認日:2026年9月19日

