- 冠水したアンダーパスは、水深や道路の端を正確に判断しにくいため、入らずに引き返します。
- 通行止めや進入禁止の表示が出ている場合は、水深を確認しに行かず、別のルートへ迂回してください。
- 冠水路で車が動かなくなり、安全に車外へ出られる段階なら、シートベルトを外してドアや窓から早めに脱出します。
- ただし、車外に流れの速い水があるなど危険な場合もあるため、周囲の水の流れや道路状況を確認して判断します。
- 一度冠水した車は、水が引いても自己判断でエンジンを始動せず、販売店や整備工場、ロードサービスなどへ相談してください。
大雨の中を車で走っていて、前方のアンダーパスに水がたまっている――。そんなとき、「前の車が通れたから自分も行ける」「少しくらいなら大丈夫」と進入するのは非常に危険です。冠水した道路は水深や道路の端が見えにくく、車内から「深さがどれくらいあるか」を正確に判断することは困難です。
冠水しているアンダーパスを見つけたら、入らずに引き返す。これが最も重要な行動です。
- アンダーパスとは?なぜ大雨で冠水しやすい?
- 冠水したアンダーパスに車で入ってはいけない理由
- 水が車の床面を超えるとエンジンや電気系統に異常が起こることがある
- 「SUVだから大丈夫」「前の車が通れた」は判断材料にならない
- 冠水表示・通行止め・遮断機を見たら必ず迂回する
- 車が冠水路で止まってしまったら、早めに脱出する
- ドアが開かない場合は窓からの脱出を試みる
- 緊急脱出用ハンマーは運転席から手が届く場所に置く
- 一度冠水した車は、水が引いてもすぐにエンジンをかけない
- 平時に「冠水しやすい場所」を確認しておく
- 大雨が降り始めたら何を確認する?
- 大雨時は「アンダーパスを通らない」を最初から選択肢にする
- よくある質問
- 参考資料・出典
アンダーパスとは?なぜ大雨で冠水しやすい?
アンダーパスとは、道路や鉄道などと立体交差するために、前後の道路より路面が低くなっている区間です。
国土交通省によると、全国には2025年3月末時点で約3,800箇所のアンダーパスがあります。

通常の雨であれば排水ポンプや排水路によって水を排出できますが、短時間に激しい雨が降り、排水能力を超えると、低い部分に雨水がたまります。
特に都市部では、地面の多くがアスファルトやコンクリートで覆われているため、雨水が地面へ浸透しにくく、道路や下水道へ一気に流れ込みます。
こうした道路冠水と内水氾濫の仕組みについては、「内水氾濫と河川洪水は何が違う?都市部で道路が冠水する理由」でも詳しく解説しています。
冠水したアンダーパスに車で入ってはいけない理由
最大の問題は、見た目では水深を正確に判断できないことです。
国土交通省も、冠水した道路では路面が見えにくくなり、水深や道路の端が分からないアンダーパスなどには進入しないよう呼びかけています。
水面だけを見て「浅そう」と感じても、アンダーパスの中央部へ進むほど路面が低くなっている場合があります。さらに、大雨が続いていれば、車が進んでいる数分の間にも水位が上昇する可能性があります。
「今なら通れそう」ではなく、「冠水していたら入らない」と決めておくことが重要です。
水が車の床面を超えるとエンジンや電気系統に異常が起こることがある
自動車は、深い冠水路を走ることを前提に設計されているわけではありません。
国土交通省は、水深が車両の床面を超えると、車内への浸水や電気装置の故障、エンジンやモーターの停止などが起こるおそれがあるとしています。
また、水深が床面より低くても、速度を出して走れば車が大きな波を作り、その水が吸気口などから入り、エンジンが停止する可能性があります。
冠水路では、次のようなトラブルが起こり得ます。
- エンジンやモーターが停止する
- パワーウインドウが動かなくなる
- 電気装置が故障する
- 自動スライドドアなどが動作しなくなる
- 水圧でドアを開けにくくなる
車が停止してから「やはり戻ろう」と思っても、すでに自力で移動できない可能性があります。
「SUVだから大丈夫」「前の車が通れた」は判断材料にならない
車高が高い車でも、冠水路を安全に通過できる保証はありません。
浸水による影響は車両の形状や設計によって異なります。
前を走る車が通過できたとしても、自分の車の最低地上高、吸気口の位置、電装部品の配置などは異なります。
また、前車が通った数分後に水位が上がっている可能性もあります。

「前の車が行ったから」「大型SUVだから」と判断せず、冠水していること自体を引き返す判断材料にしてください。
冠水表示・通行止め・遮断機を見たら必ず迂回する
アンダーパスでは、水位表示、電光掲示板、注意看板、通行止め設備などが設置されている場所があります。
通行止めや進入禁止の表示が出ている場合は、その先の水深を自分で確認しに行かず、別のルートへ迂回してください。

2026年にはアンダーパスの冠水による人的被害などを受け、国土交通省が予防的な事前通行規制や遮断機を含む車両進入防止策の強化を進めています。
2026年9月16日時点では、直轄国道の22箇所で予防的な事前通行規制を運用するとしています。
つまり、冠水してから通行止めにするだけでなく、危険が高まる前に車を入れない対策が強化されています。
車が冠水路で止まってしまったら、早めに脱出する
冠水路で車が動かなくなった場合は、水位がさらに上がる前に車外へ出られるか判断します。

国土交通省は、冠水路で自動車が動かなくなった場合には、早めに脱出することが重要としています。
水位が上がるほど、水圧によってドアが開けにくくなります。
安全に車外へ出られる段階であれば、シートベルトを外し、ドアや窓から脱出します。
ただし、外へ出ることで流れの速い水に巻き込まれるなど、車外そのものが危険な場合もあります。周囲の水の流れや道路状況も確認し、可能な限り早い段階で判断することが重要です。
ドアが開かない場合は窓からの脱出を試みる
水位が高くなると、車外からかかる水圧によってドアが開きにくくなります。
国土交通省が示す水没車両からの基本的な脱出手順は、次のとおりです。
- 落ち着いてシートベルトを外す
- 窓が開くうちに窓を開けて脱出する
- 窓が開かなければ、破砕できる窓ガラスを緊急脱出用ハンマーで割る
- 窓から脱出できない場合は、車内外の水位差が小さくなりドアが開けられるタイミングで脱出する
パワーウインドウは、電気系統が浸水すると動かなくなる可能性があります。
そのため、「水がもっと上がってから出ればいい」と待つのではなく、窓やドアが使えるうちに脱出することが重要です。
緊急脱出用ハンマーは運転席から手が届く場所に置く
窓が開かなくなった場合に備えて、国土交通省は緊急脱出用ハンマーを車内に備えるよう呼びかけています。

ただし、どのガラスでも割れるわけではありません。
フロントガラスなどに使われる「合わせガラス」は、一般的な緊急脱出用ハンマーでは割って脱出できません。また、一部の車ではサイドガラスにも合わせガラスが使われています。
購入しただけで安心せず、次の点を確認しておきましょう。
- 自分の車のどの窓を破砕できるか
- ハンマーの使い方
- 運転席に座った状態で確実に手が届く場所にあるか
- 必要ならシートベルトカッター機能があるか
トランクの奥に入れてしまうと、緊急時に取り出せない可能性があります。
一度冠水した車は、水が引いてもすぐにエンジンをかけない
冠水した車は、水が引いて外見上問題がなさそうでも、自己判断でエンジンを始動しないでください。
電気装置やエンジン、ブレーキなどが損傷している可能性があります。
国土交通省とJAFはいずれも、浸水した車について点検を受けるよう案内しています。
車両が安全な場所にあり、自分自身の安全を確保したうえで、販売店、自動車整備工場、ロードサービスなどへ相談してください。
平時に「冠水しやすい場所」を確認しておく
大雨になってから「いつもの道路が通れない」と気づくより、平時から危険箇所を把握しておく方が安全です。

国土交通省や地方整備局、自治体では、アンダーパスや道路冠水注意箇所を地図で公開しています。
通勤・通学や送迎などで普段使うルートにアンダーパスがある場合は、次の点を確認しておきましょう。
- 冠水注意箇所になっていないか
- 大雨時に通行止めになる可能性があるか
- アンダーパスを通らない迂回ルート
- 川沿いや低地を避ける別ルート
「危険になったらナビに任せる」ではなく、低い道路を避けるルートを1本決めておくと、大雨時の判断が早くなります。
大雨が降り始めたら何を確認する?
大雨時は、道路の目の前の状況だけでなく、これから危険度が高まる地域も確認します。
気象庁の浸水キキクルでは、短時間の強い雨による浸水害の危険度を1km四方ごとに5段階で確認できます。

気象庁も、道路のアンダーパスは短時間で急激に浸水・冠水の深さが増す傾向があり、命を奪われる危険性がある場所として挙げています。
2026年5月29日からは、大雨に関する防災気象情報も警戒レベルとの対応が分かりやすい名称に変更されています。
大雨時には、次の情報を組み合わせて確認します。
- 気象庁の大雨に関する注意報・警報・危険警報
- 浸水キキクル・大雨キキクル
- 道路管理者の通行止め・道路規制情報
- 道路上の情報板
- 自治体や国土交通省が公開する道路冠水情報
キキクルの基本的な見方は、「情報ツール『キキクル』の活用法と大雨時の避難判断基準」で解説しています。
大雨時は「アンダーパスを通らない」を最初から選択肢にする
アンダーパスの冠水事故を避ける最も確実な方法は、冠水している道路へ入らないことです。
車がどこまで水に耐えられるかを試す必要はありません。
前の車が通れたか、車高が高いか、水深が何cmに見えるかではなく、冠水していること自体を危険のサインと考えます。
冠水表示や通行止めを見たら引き返す。大雨が予想される日は、アンダーパスや低い道路を避ける。平時から迂回ルートを確認しておく。
そして万が一、車が水の中で動かなくなった場合は、水位が上がり切る前に脱出できる段階を逃さないことが大切です。
よくある質問
- Q前の車がアンダーパスを通れた場合、自分の車も通って大丈夫ですか?
- A
A1. いいえ。前の車と自分の車では車高や構造が異なり、その数分間にも水位が上昇する可能性があります。冠水した道路は水深や道路の端を外から正確に判断しにくいため、前の車が通れたことを安全の根拠にせず、冠水していたら進入せず迂回してください。
- Q車が冠水路で動かなくなったら、車内で救助を待った方がいいですか?
- A
一律に車内で待つのではなく、水位が上がる前に安全に脱出できる状況なら早めに脱出することが重要です。国土交通省も、冠水路で車が動かなくなった場合には早めの脱出を呼びかけています。まずシートベルトを外し、ドアや窓が開くうちに脱出します。ただし、車外に強い水流があるなど外へ出ること自体が危険な場合は、周囲の状況を確認してください。
- Q緊急脱出用ハンマーがあれば、どの車の窓でも割れますか?
- A
いいえ。フロントガラスなどに使われる合わせガラスは、一般的な緊急脱出用ハンマーでは脱出できるように割れない場合があります。一部の車種ではサイドガラスにも合わせガラスが使われています。自分の車で破砕可能な窓を取扱説明書などで確認し、ハンマーは運転席から確実に手が届く場所へ備えておきましょう。
参考資料・出典
- 国土交通省「道路の冠水対策」
- 国土交通省「直轄国道のアンダーパス 予防的な事前通行規制の導入拡大について」
- 国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」
- 国土交通省「台風の前に車両からの脱出手順の確認を!」
- 国土交通省「水中に転落したときの脱出方法」
- 気象庁「浸水キキクル」
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」
- 国土交通省「道路情報提供システム」
- JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
- JAF「水深何cmまでドアは開くのか?」
情報確認日:2026年9月20日

