- 長時間同じ姿勢を続けず、体調や周囲の安全に問題がなければ、ときどき立つ・歩く・軽い体操やストレッチを行います。
- 歩行が難しいときは無理に運動せず、足の指、かかと、つま先、足首を動かし、ふくらはぎは軽くもみます。
- トイレを気にして水分を控えすぎず、こまめに水分を取り、アルコールは控えます。
- 片脚の痛み・赤み・むくみや胸痛は早めに医師へ相談し、突然の強い胸痛・背中の痛み・冷汗・呼吸困難は119番通報などで救急要請します。
大きな災害のあと、避難所や車内で長い時間を過ごすときに注意したい健康問題の一つが「エコノミークラス症候群」です。
厚生労働省は、食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座り、足を動かさないでいると、血行不良によって血液が固まりやすくなり、できた血栓が肺の血管に詰まって肺塞栓などを起こすおそれがあると説明しています。
飛行機の利用者だけに起こる病気ではありません。災害時には、車中泊だけでなく、避難所で長時間同じ姿勢を続けたり、トイレを気にして水分を控えたりすることも予防上の注意点になります。
予防の基本は、「長時間動かない状態をできるだけ避ける」「こまめに水分を取る」「足を意識して動かす」ことです。
エコノミークラス症候群とは?避難所や車中泊でも注意が必要
一般に「エコノミークラス症候群」と呼ばれる状態には、脚などの深い静脈に血栓ができる深部静脈血栓症と、その血栓が肺へ移動して血管を詰まらせる肺血栓塞栓症が関係しています。
厚生労働省は、災害時の健康管理としてエコノミークラス症候群への注意を呼びかけています。
避難生活では、自宅での普段の生活に比べて身体を動かす機会が減ることがあります。車中泊では座席という限られた空間で同じ姿勢を続けやすく、避難所でも狭い場所で座ったり横になったりする時間が長くなる場合があります。
さらに、トイレへ行く回数を減らそうとして飲水量を減らすこともあります。
こうした状況が重ならないよう、意識して身体を動かし、水分を取ることが重要です。
エコノミークラス症候群予防の基本は「動くこと」と「水分補給」
厚生労働省が示す予防方法の中心は、軽い運動と十分な水分摂取です。

避難生活の中でも、体調や周囲の安全に問題がなければ、ときどき立ち上がったり、歩いたり、軽い体操やストレッチを行ったりして、同じ姿勢を長時間続けないようにします。
車中泊の場合も、車内に座ったまま過ごし続けるのではなく、安全な場所で定期的に車外へ出て身体を動かせる環境であれば、歩行や軽い運動を取り入れます。
日本循環器学会も、静脈血栓症・肺塞栓症の予防では積極的な運動、特に歩行が重要であるとしています。
ただし、災害によるけがや持病などで歩行が難しい場合は、無理に運動せず、医療職や避難所の保健師などへ相談してください。
座ったままでもできるエコノミークラス症候群予防の足の運動
十分に歩けない環境でも、座った状態で足を動かすことはできます。
厚生労働省や政府広報では、予防のための運動として次のような動きを紹介しています。
- 足の指をグーパーする
- かかとを上げ下げする
- つま先を引き上げる
- ひざを抱えるなどして足首を回す
- ふくらはぎを軽くもむ

大切なのは、激しい運動をすることではなく、動かない時間を長く続けないことです。
車内や避難所で座っているときにも、足首やふくらはぎを意識的に動かします。
なお、ふくらはぎについて厚生労働省が示しているのは「軽くもむ」という予防方法です。強い力で長時間マッサージすることまで推奨しているわけではありません。
また、片脚の腫れ・痛み・赤みなどがすでに見られる場合は、予防運動だけで様子を見ず、早めに医療職へ相談してください。
避難生活ではトイレを気にして水分を控えすぎない
災害時には、仮設トイレまで行くのが大変、トイレが混雑している、夜間に移動したくないといった理由から、水分を控えてしまうことがあります。
しかし、厚生労働省は、十分な食事や水分を取らないこともエコノミークラス症候群につながる要因として注意を呼びかけています。
予防のためには、のどが渇いてから一度に大量に飲むのではなく、避難生活の中でこまめに水分を取ることを意識します。
アルコールについては、厚生労働省が予防上「控える」よう案内しています。また、できれば禁煙することも挙げています。
持病などによって医師から水分摂取量を制限されている人は、自己判断で大幅に増やさず、避難所の医療職やかかりつけ医などへ相談してください。
服装や寝る姿勢もエコノミークラス症候群予防のポイント
避難生活では服を着替えにくかったり、防寒のために衣類を重ねたりすることがあります。
厚生労働省は、エコノミークラス症候群の予防策として、ゆったりした服装にし、ベルトをきつく締めないことを挙げています。
眠るときには足を上げることも推奨されています。
車中泊では、「フルフラットにすればエコノミークラス症候群を防げる」と一律に考えるのではなく、長時間、自動車のシートに座った姿勢のまま眠り続けないことを意識してください。

日本循環器学会も、車中で避難する場合には長時間シートに座った姿勢で眠らないことを注意点として挙げています。
弾性ストッキングは自己判断ではなく適切な指導の下で使う
エコノミークラス症候群の予防策として、弾性ストッキングが紹介されることがあります。
日本循環器学会は、車中泊や避難所で十分な運動が難しい場合、弾性ストッキングを適切な指導の下で使用することで静脈血栓症・肺塞栓症の予防効果が高まるとしています。
したがって、「災害用に弾性ストッキングを買っておき、誰でも着用すればよい」というものではありません。
サイズや使用方法が適切でなかったり、身体の状態によって使用の判断が異なったりする可能性があります。特に持病がある人や血流に関する治療を受けている人は、医師や看護師などの医療職へ相談して使用してください。
車中泊ではエコノミークラス症候群対策を意識して生活する
災害時には、プライバシーの確保やペットとの避難などさまざまな事情から、やむを得ず車中泊を選ぶ人もいます。
車中泊そのものが直ちにエコノミークラス症候群を起こすわけではありませんが、狭い座席で長時間動かない状態になりやすいため、予防行動を意識する必要があります。

車中泊を続ける場合は、次の点を心掛けます。
- 長時間同じ姿勢のまま過ごさない
- 安全を確認できる場所で、ときどき歩いたり身体を動かしたりする
- 車内でも足首やかかとの運動を行う
- 十分にこまめな水分補給を行う
- ゆったりした服装にする
- 座席に座った姿勢のまま長時間眠り続けない
また、自治体が車中泊避難者の受付や状況把握を行っている場合は、車中泊していることや滞在場所を伝え、支援から孤立しないようにすることも大切です。内閣府も、車中泊避難者の状況把握や、保健師などと連携した健康管理を自治体による支援の一つとして示しています。体調に不安がある場合は、巡回する保健師や医療職などへ相談してください。
片脚の腫れは早めに相談し、突然の胸痛や呼吸困難は救急要請する
厚生労働省は、片側の脚の痛み・赤み・むくみや胸の痛みがある場合には、早めに医師へ相談するよう案内しています。片脚だけが腫れる、痛む、赤くなるといった症状は深部静脈血栓症の可能性があるため、「避難生活だから仕方がない」と自己判断せず、早めに医療職へ相談してください。
また、これまでにない息切れ、胸や背中の痛み、動悸などがある場合は、肺血栓塞栓症の可能性もあるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
突然の強い胸痛や背中の痛み、冷汗、安静にしていても苦しいほどの呼吸困難などがある場合は、ためらわず119番通報などの救急要請をしてください。
まとめ|避難所・車中泊では「動く・水分を取る」を習慣にする
エコノミークラス症候群は飛行機の中だけで起こるものではなく、災害後の避難生活でも注意が必要です。特に、車内や避難所で長時間同じ姿勢を続けることや、水分を十分に取らない状態を避けることが重要です。
厚生労働省が示す基本的な予防策は、軽い体操やストレッチ、こまめな水分補給、かかとの上げ下ろし、ふくらはぎを軽くもむこと、ゆったりした服装、眠るときに足を上げることなどです。可能であれば歩く機会も作り、長時間動かない生活を避けます。
一方、弾性ストッキングは誰でも自己判断で使用するものではなく、必要に応じて医療職などの適切な指導の下で使用します。
「動かない時間を長くしない」「水分を控えすぎない」「足をこまめに動かす」。
避難生活という限られた環境でも、この基本を日常の行動として取り入れることがエコノミークラス症候群の予防につながります。
よくある質問
- Q避難所や車中泊でエコノミークラス症候群を防ぐには何をすればよいですか?
- A
長時間同じ姿勢を続けず、ときどき歩いたり軽い体操やストレッチを行ったりします。あわせて十分にこまめな水分補給を行い、座ったままでもかかとの上げ下ろしや足首の運動などを続けることが重要です。
- Q車中泊では足を伸ばして寝ればエコノミークラス症候群を防げますか?
- A
足を伸ばすことだけで予防できるとはいえません。長時間シートに座った姿勢を続けないこと、定期的に身体や足を動かすこと、こまめに水分を取ることなどを組み合わせることが大切です。
- Qエコノミークラス症候群予防の弾性ストッキングは誰でも使えますか?
- A
日本循環器学会は、十分な運動が難しい場合に弾性ストッキングを適切な指導の下で使用することを示しています。自己判断で一律に着用するのではなく、持病などがある場合を含め、必要に応じて医療職へ相談してください。
参考資料・出典
- 厚生労働省「災害時における健康管理」
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群予防のために」
- 厚生労働省「被災地での健康を守るために」
- 政府広報オンライン「令和6年能登半島地震で被災された皆さまへ」
- 日本循環器学会「避難所でご注意いただきたいこと」
- 日本呼吸器学会「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)に関するQ&A」
情報確認日:2026年8月29日

