「防災のまとめ」では、記事制作や情報整理、画像制作、サイトの開発など、さまざまな場面でAIを活用しています。
このことは、あえてきちんとお伝えしておきたいと思って今回のコラムを書きました。
私は本業を持ちながら、このサイトを一人で運営しています。記事の企画、調査、執筆、ファクトチェック、画像制作、サイト改善、最新災害情報の仕組みづくり、そして今後予定している新機能のためのデータベースの整備まで。これらを従来の方法だけで一人で行うことは、現実的には困難です。
しかし、AIがあるからこそ、一人でもここまでできる。
これは「防災のまとめ」を運営するうえで、とても大きな意味を持っています。ただし、防災情報は人の生命や身体、財産に関わります。だからこそ私が大切にしているのは、AIを使わないことではなく、AIをどう使うかです。
AIを「答え」ではなく「力を広げる道具」として使う
いうまでもないですが、AIはとても多くのことができます。大量の資料を整理したり、文章の構成を考えたり、分かりにくい情報を読みやすく整理したり、画像を作ったり、プログラムを書いたり、データを分析したりすることができます。
以前なら、専門家や制作会社、エンジニア、デザイナーなど、複数の人が必要だった仕事の一部を、一人でも進められるようになりましたが、AIを単に「作業を楽にするもの」と捉えておりません。
これまで時間や人手、費用の問題で実現できなかったことを実現する先は、「より多くの人に役立つ情報やサービスを届けられるようにする」ことと考えています。
「AIがそう言った」は根拠にしない
一方で、AIは間違えることがあります。存在しない情報を、もっともらしく説明してしまうこともあります。このメディアをスタートした際に数本書いてみた記事は本当に酷いクオリティでした。古い情報と新しい情報を混同したり、数字や制度を誤って理解したりするレベルに留まらず、全くの作り話を書いてきたこともあります。
そのため「防災のまとめ」では、AIの回答そのものを、一切、事実の根拠にはしません。
記事を書くときには、防災士教本、防災白書、災害対策基本法などの資料に加え、内閣府、気象庁、国土交通省、消防庁、自治体などが公表している一次情報をできる限り確認します。
特に、避難情報、警戒レベル、気象情報、災害に関する数値、制度、法律、防災行動などについては、できるだけ公的・公式な情報へたどることを基本にしています。
AIに知識を尋ねて終わりではなく、「その情報は、どこに書いてあるのか」まで確認する。また、正しいことを書いていても、そこで使う言葉や言い回しまでを、できる限り公的な資料に合わせるようにもしています。
これは、このサイトを運営するうえで非常に大切にしていることの一つです。
「書く」と「確かめる」を分ける
記事制作でも、AIに一度文章を書かせて、そのまま公開することはありません。
「防災のまとめ」では、記事制作の工程を意識的に分けています。まず記事のテーマや検索意図を整理し、公的資料などを調査します。
そのうえで文章を作成し、読者の読みやすさや、機械可読性の部分を調整します。
そして、その最後にファクトチェックを行います。
- 数字は正しいか
- 制度の説明は正しいか
- 避難行動に誤りはないか
- 読者に危険な誤解を与える表現になっていないか
- 参照した資料と本文の内容が一致しているか
こうした点を改めて確認します。
つまり、「文章を作る工程」と「文章が正しいかを確認する工程」を完全に分けています。
AIは文章を作るのが得意です。
AIはチェックにも役立ちます。
だからこそ、一つの回答だけで完結させず、役割を分けて何度も確認する方が、AIの力をより安全に使えると考えています。
ファクトチェックが終わった文章は、いったん「LOCK」する
もう一つ大切にしている仕組みがあります。
ファクトチェックが完了し、修正を反映した記事は、いったん本文をLOCKします。その後、検索順位を上げたいからといって、SEO的視点で文章を勝手に書き換えることはしません。
もし制度や法律などの改正に伴って、重要な数字や制度、防災行動、意味に関わる文章を変更した場合には、もう一度ファクトチェックを行います。
防災情報では、「少し言い回しを変えただけ」のつもりでも、意味が変わってしまうことがあります。SEOは、多くの人に情報を届けるために大切です。しかし、検索順位を上げることより、正しい情報を届けることの方が重要です。
この優先順位は、これからも変えずに運営してゆきます。
さらに、「防災のまとめ」では、AIによる確認だけでファクトチェックを完了させているわけではありません。
最終的には、防災士である運営者自身が内容を確認する「Human-in-the-Loop」の工程を入れています。
AIは、大量の資料を比較したり、数値や表現の矛盾を探したり、確認すべきポイントを洗い出したりすることが得意です。一方で、防災情報では、文章として正しいだけでは十分ではありません。
「その行動を実際の災害時に読者へ勧めてよいのか」
「条件によって危険になる表現ではないか」
「公的情報の意味を単純化しすぎていないか」
といった判断には、防災の知識と人間による確認が必要です。
そこで、AIに調査・比較・チェックを支援させながら、最後は防災士の視点で、正確性だけでなく、安全性や実際の行動につながる内容になっているかを確認しています。
AIの得意な「大量の情報を処理する力」と、人間の「責任を持って判断する力」を組み合わせることが、「防災のまとめ」で大切にしているファクトチェックの考え方です。
AI要約も、確認済みの記事から作る
現在、「防災のまとめ」の記事には、「まず覚えておきたいこと(AI要約)」を掲載しています。
正確に物事を伝えると本文が非常に長くなっております。それは情報の正確性や網羅性からはプラスなのですが、もし急ぎで確認したいなどの読者ニーズに応えられる作りになっていません。そのために要約をスタートさせました。
そしてこの要約でも、AIに自由に知識を追加させることはしていません。ファクトチェックを終えてLOCKした本文をもとに要約を作り、本文に書いていない新しい事実を加えないようにしています。
AI要約は、記事を読まなくても済むようにするためのものではありません。
最初に重要なポイントをつかんでもらい、「これは自分に関係がありそうだ」「もう少し詳しく読んでおこう」と思ってもらえたらぜひ全部を読んでいただきたいと思います。
画像制作にもAIを使っています
記事の挿絵やアイキャッチにもAIを活用しています。ただ、画像であっても防災情報であることに変わりはありません。
たとえば、津波が来ているのに海岸へ様子を見に行っている。雷のときに木の下へ避難している。冠水した道路を無理に歩いている。地震の揺れの最中に火元へ走っている。
こうした絵を使えば、誤った行動を伝えてしまいます。
そのため、画像についても記事本文との整合や、防災行動として正しいかどうかを確認しています。
AIで作ったからこそ、人間が見る必要がなくなるのではなく、人間が確認すべきポイントを明確にすることが大切だと考えています。
ただ、イラストに関しては少々おかしいところがあっても、それが防災上のミスリードにならないのであれば、それは許容しています。
サイト開発でも、AIを積極的に使っています
AIを使っているのは記事だけではありません。
「最新災害情報」の仕組みや、サイトのさまざまな機能の開発にもAIを活用しています。
プログラムの作成、問題の調査、テスト、データ処理、改善案の検討など、AIによって一人(しかも非エンジニアです)でもかなり大きな開発ができるようになりました。
一方で、本番サイトへ影響する変更については、いきなり公開するのではなく、テストを行い、実際の公開には影響しない形で動作を確認し、ログを確認し、問題がないことを確かめながら段階的に反映するようにしています。
そして、本番への反映や自動公開など、大きな影響を持つ操作についても「Human-in-the-Loop」、最終的に人間が判断します。
ここでも考え方は記事制作と同じです。
AIにできることはできるだけ任せる。
しかし、責任までAIに渡さない。
これを基本としています。
AIによって、人間の判断を減らしたいわけではない
AIによる自動化というと、「できるだけ人間を介さない仕組み」を想像するかもしれません。
「防災のまとめ」が目指しているのは、少し違います。
人間がすべての単純作業を行うのではなく、情報を集める、整理する、比較する、候補を作る、下書きを作る、異常を探す。こうした作業はできるだけAIに任せる。
そのかわり人間は、「この情報は本当に正しいか」「読者にとって安全か」「この内容を公開すべきか」という、本当に重要な判断に時間を使う。
そんな運営を目指しています。
言い換えると、AIで人間の責任をなくすのではなく、人間が責任を持つべき場所を、より明確にする。という考え方です。
AIは、信頼性の敵ではない
AIが作った情報には注意が必要です。これは間違いありません。
しかし私は、「AIを使うと情報の信頼性が下がる」と単純に考える必要もないと思っています。AIを使うことで、大量の資料を比較したり、矛盾を探したり、古くなった情報を監視したり、人間だけでは時間的にできなかった確認工程を増やすこともできます。
重要なのは、AIを使ったかどうかではなく、どのような仕組みで使ったか。
だと思います。
- 一度AIが書いた文章をそのまま公開するのか。
- 一次情報まで確認するのか。
- 別の工程でファクトチェックするのか。
- 変更後にもう一度確認するのか。
- 最後に人間が判断するのか。
同じAIを使っていても、その運用によって情報の品質は大きく変わります。
AIを使うことも、使い方を説明することも大切にしたい
「防災のまとめ」では、これからもAIを積極的に活用していきます。
同時に、何をAIに任せるのか。何を一次情報で確認するのか。どこで人間が判断するのか。どのように誤りを防ぐのか。こうしたことも、できるだけ分かる形でお伝えしていきたいと思っています。
AIを使っていることを隠すのではなく、どのように使っているのかを示すことも、情報を発信する側の責任の一つだと思うからです。
AIは、このサイトの運営を支えてくれる非常に重要なパートナーです。
でも、最終的に何を掲載し、何を読者へ伝えるのかを判断し、その情報に責任を持つのはAIではありません。
「防災のまとめ」を運営する防災士の私自身です。
AIの力をできるだけ大きく活かしながら、人間が持つべき責任は手放さない。これからも、そのバランスを大切にしながら「防災のまとめ」を育てていきたいと思っています。

